未来を作る因子
ここでは、未来とはどうやって築かれていくか、そのメカニズムを紹介する。
魂の記憶が投影する世界
魂の記憶が現象化する仕組みで紹介したように、主観世界を作るのは魂が内在した魂の記憶だ。
これは、パラパラ漫画(アニメ)のヒトコマのようなものだとイメージするとわかりやすいと思う。
今この瞬間に感じ取っている主観世界は、今まさに表示されているセル画のようなものだ。
それに対して、その次の場面を書くための画材や素材というのが、魂の記憶にあたる。
都度そこにある素材をかき集め、次のヒトコマを完成させながら、次の現実を現象化しているような状態だ。
だから、まだ目の前に訪れていない未確定の未来というのは、素材の状態で自己の深部に内在されている。
その素材というのが、未来を作るための因子――つまり、魂の記憶だ。
因子化しやすい対象
因子となる情報の蓄積は、主観世界との関わりによって刻一刻と成され続けている。
最も因子化しやすいのは一般的に、以下の順だと思う。
- 自分自身が主観世界に働きかけた言動
- 自分自身が抱える感情や思考や先入観
なぜ自己が蓄積のベースにあるかというと、自己意識が最も集中している対象が自己だからである。
こんな経験を誰でもしているかと思う。
- 他人の感情よりも、自分の感情のほうが感じやすい。
- 他人の経験よりも、自分の経験のほうが生々しい。
- 世界のどこかより、身近な場所の出来事の方が感情が揺さぶられる。
これらの感じ方は、自分事と他所様だからではない。
そう感じることも含めて、自己意識が最も集中している対象が自己であるせいだ。
本当は、自己の肉体や感情や思考も、他者や世界と同じ主観世界の一部である。
それなのに、自己の肉体や感情や思考をまるごと自分のものだと考えていたり、強い感受性を持っている。
これは、自己意識が強く集中しているから起こっていることだ。
因子の蓄積のされ方
以下は、あくまでもシンプルな因果関係の説明だ。
事例1:例えば他者に腹が立って殴ったとする。
魂の記憶:「腹が立ったから殴った」という情報が記録される。
- 情報の投影先は常に主観世界である。
- 主観世界の主人公(自己意識が最も集中している対象)は常に自己だ。
その結果:腹が立った他者に殴られる。
事例2:例えば泣いている人を同情心から慰める。
魂の記憶:「泣いている人が可哀想で慰めた」という情報が記録される。
- 情報の投影先は常に主観世界である。
- 主観世界の主人公(自己意識が最も集中している対象)は常に自己だ。
その結果:自分が泣いていると誰かが慰めてくれる。
もう少し複雑な事例を上げる。
事例3:遊ぶお金が欲しいから、病気の親がいると偽って同情を誘いお金を得た。
魂の記憶:「娯楽の富を得るために嘘を使って、他者を憐れませて富を奪う」
- 情報の投影先は常に主観世界である。
- 主観世界の主人公(自己意識が最も集中している対象)は常に自己だ。
その結果:他者と善意で関わろうとしても、裏切られる・騙される・富を奪われる。
実際には、これらの事例にように1:1で現象化することはなかなかない。
まるで夢が混沌としがちなように、魂の記憶の中で、因子が混ざり合って複雑化して現れるため、原型通りの展開があるわけではないことのほうが多い。
しかしその一方で、この情報として内在化したあと現象化される速度が早い場合は、1:1で現れやすくなる。
因子の内在と投影の関係は、このような特徴を持っている。
投影によって因子は消える
主観世界に投影を済ませた時点で、因子となっている情報=魂の記憶のその部分というのは消える。
ただし、投影が起こるということは、自己に何らかの出来事が起きるというわけで、それに対して反応も感情も起こさない人はいないだろう。
こうして因子が再生産される。
だから私たちは生きていて、この先も生き続ける。主観世界を築き続ける。
自己意識というのは、このような構造を抱えている。
それでも、反応も感情も起こさなければどうなるか?
心の中にしこりも生み出さず、受け流すがままにすればどうなるか?
そのとき因子は消える。
しかし、そう在れる人はなかなか居ないだろう。
それもそのはずで、そう在れるようになるのは、宇宙意識へ還るプロセスに入った人だけだ。
宇宙意識へ還るプロセスに入ったからこそ、そう在るようになるとも言える。
では、通常はどうやって、自分にとって嫌な因子を乗り越えるか?
それは、苦の因子を楽の因子に転じることだ。
その方法は、課題を越える方法にて説明する。