1:暴力を避ける
苦の因子を避けることで不幸を遠ざける第1の行動は「暴力を避ける」こと。
具体的に何をすべきなのかと言うと、他者をむやみに傷つけたり殺さないことだ。
これは人に対してのみならず、あらゆる存在に対して等しく言える。
生物に対しては、いたずらに傷つけない、暴力しない、殺さない。
物質に対しては、いたずらに壊したり傷つけたりしない。
いたずらにというのは、具体的にどのような範囲かというと、生存や健康に必要なことを除いては、主体的に他者(あらゆる生物や物質)を傷つけたり殺したり壊してはいけない。
だからこれは完全な不殺生とは少し違う。
なぜかというと生き物というのは、ただ在るだけで数多の生き物を殺すし育みもするからだ。
それは目に見えるものだけを指しているわけではない。
命のやり取りというのは、実際には、目に見えるような衣食住に関わる、他の生物との関わり合いだけに留まらない。
例えば、息を吸って吐くだけでも莫大な微生物を殺すことになる。
その一方で、人間というのは、存在そのものが何百兆もの微生物を育むための大地でもある。
微生物というのは取るに足りないと思われるかもしれないけれども、実際には、それが存在しなければ、あらゆる生物自体が存在することができない重要な存在だったりする。
私たちは生物である限り、生と死の循環の中に在るのが現実だ。
だから不殺生というのは実際には不可能だ。だからこそ、これが完ぺきな不殺生になりうることはない。「いたずらにそうしない」「意識して避ける」それ自体に対する必要性であり、精神性を、あらゆる存在に対する敬意と慈しみに繋げるための振る舞いというわけだ。
存在に対する敬意と慈しみの精神性を行動面からでも習慣づけることで、自身の心がけも、自ずと、あらゆる生物に対しても物質に対しても、優しくなるし柔らかくなる。
すると、主観世界に対する働きかけ自体も、自然と敬意が現れ出るようになるだろう。
これはそのための振る舞いというわけだ。
因子が減るとどうなる?
このような負の因子が減るとどうなるかというと、以下のような体験が現れやすくなる。
- 他者に優しくされやすくなる
- 子供や動物に懐かれやすくなる
- 怪我や事故の可能性が減る
因子が増すとどうなる?
このような負の因子が増してしまうと、どんな影響を受けやすくなるかというと、以下のような体験をしやすくなる。
- 喧嘩や暴力に遭いやすくなる
- 他者に怒りや冷酷さを向けられやすくなる
- 怪我や事故の可能性が増える